守るべき約束

「生徒と朝から勉強すると約束したんで、明日は早めに出勤します。」

そんな会話で今日は終業。嬉しい気持ちになりました。そんな会話とともに、話した話を自分なりに整理したくなり、夜分に執筆中です。

私は、約束には二種類あると思っています。「目標の約束」と「行動の約束」。

「目標の約束」は、例えば「次のテスト、絶対100点取ります」みたいなもの。宣言に近いですね。これは、テストの難易度など様々な要因が絡むので、その実現性に関しては確実ではないことはだれもが認識しています。その人以外の要素が、その約束の成否に影響を与えるからです。だから、それが実現されなくても、結果によっては信頼関係は損ないません。それよりも、その約束を本気で果たそうとしているかどうかのプロセスによって、その人の信頼は左右されます。「100点取る」と約束したんだったら、それに見合う行動を取っているかどうか。1日12時間勉強して、何度も何度も問題を解き直して、最後の最後に凡ミスで97点でした…そんな人は約束を果たせなかったとしても、信頼されると思います。

そういう意味でも、重要なのは、その目標の一段階下にある「行動の約束」。私はこちらこそが人と信頼関係を築く上で、また子どもたちの教育に関わる上では重要だと思っています。例えば、最初に紹介した会話のようなもの。「明日朝から勉強しよう」と言った約束を果たせるかどうかは、基本的には、自分の行動ただ1点。この自分の行動次第の約束は、信頼関係にとても影響を与えるため、絶対に守らなくてはなりません。

95%の確率で、朝起きた瞬間に後悔するんです。まぁ、他の先生いるし、多少遅れてしまってもいいかな、って自分への甘えも出る。強い人は違うかもしれないけれど、私は同じようなシチュエーションのとき、大体そうなります(笑)去年、試験前に毎日6:45からの朝勉を約束したときとかは、毎朝後悔してました。うーん、寝たい!と。でもそれを乗り越えたとき、人から信頼される人間になっていける(多分)し、少なくとも、少しだけ強い自分になれる。人との約束を守れた自分は、自分が信頼できる自分にもなっていける。

これは学校教員のときに本当に身に染みました。

口だけの先生のクラスの子どもたちは、約束を守らなくなります。チャイム着席もしないし、宿題を出さなくても悪びれた様子もない。一方で、先生が自分が言ったことは必ずやる姿勢でいると、子どもたちも時間を守り、信頼を大切にして動くようになります。「行動の約束」を守らないことを繰り返してしまうと「この人は行動の約束を守らない人だから、この人に対して約束は守らなくて良い」と思うようになります。時間を守らないことだけかと思ったら、それが段々、掃除のルールを守らなくなり、宿題を出さなくなり、コミュニケーションが希薄になっていく。そんなループに陥ります。

私は、教員時代に大きな失敗をしました。1年目の2学期のこと。毎日勉強ノートに振り返りを書こう、先生もコメントすると宣言したにも関わらず、それができなくなってしまった時期がありました。言い訳ですが、毎朝7:00出勤、帰宅は21:00、そこから授業準備を家でして22:30、それから勉強ノートにコメント、そんな日々を繰り返していたとき、ふと「まぁ、今日くらいいいかな」と思ってしまったんです。それでスタンプだけ押して返却してしまった。そこまでに築いていた信頼があったから(たぶん、これは自分への信頼だけではなく、担任の先生への子どもたちの信頼があり、担任の先生が自分のことを子どもたちの前でよく言ってくれていたので、本質的には担任の先生への信頼だったと思う)、数週間は子どもたちの反応は変わらず、自分が楽をし始めていました。それでも、私はあろうことか「毎日振り返りを書こう」と言い続けていました。1ヶ月後、気づいたときには、みんなの振り返りがどんどん雑になっていく。自分の「毎日振り返りを丁寧に書こう」もまったく響かないものになっていました。そりゃそうですよね。自分が宣言したことをやっていないんだから。さらに最悪なことに、そうすると、「チャイム着席しよう」「掃除は丁寧にやろう」「宿題は必ずやってこよう」そんな言葉も届かなくなっていきました。

そんなときに、私の尊敬する二人の先生に目をやると、「言ったことは必ずやる」の姿勢を貫き、生徒から圧倒的な信頼を得ていました。「雑巾がけは膝をついてやりましょう」と言ったら自分も一緒にやる。「合唱コンクールの朝練をしよう」と言ったら朝一番にくる。そんな先生の一言は何を言っても子どもたちに伝わるんですね。

一つの約束を守れない先生の言うことは、一つも聞いてもらえなくなり、一つの約束を積み重ねる先生の言うことは、すべて伝わるようになる。

1年目の2学期は、本当に辛くて教員をやめたいとすら思っていたのですが、その姿勢を学び「行動の約束を守ること」を積み重ねると、徐々に子どもたちと関係を作ることできるようになり、楽しくなっていきました。それ以来、自分が言った「行動の約束」は必ず守ると決めています。最近、習慣化についてしつこく取り組んできて、ブログに書いていたのも、実は子どもたちに「英語の音読の習慣化」を実行して欲しくて伝えているから。自分が習慣化する宣言をして、習慣化することが実現できていないのに、子どもたちに響く言葉はかけられないとわかっているからです。

そういう意味で、「行動の約束」は地獄への第一歩でもあります(笑)大変だから。でも相手のためを思った大変な「行動の約束」をして、約束を守った時、人から信頼される人間になれる。そういう意味では、人から信頼されたかったら、「行動の約束をして守る」ということを繰り返せば良いと思います。

できないと信頼されなくなっちゃうから、塩梅は難しいですけどね。できないなら「行動の約束」はしない方が良い。でも一方で、ちょっと背伸びして、絶対これ大変だなと思うくらいの「行動の約束」をすることは、ここまで書いてきた通り人との関係を築く協力な手段になると思いますし、同時に自分を成長させてくれることでもあると思っています。「言わなきゃよかったな」を乗り越える力がついてくるからです。あとは、誰かのためになりたい自分に見合う「行動の約束」を積み重ねれば、どんどんなりたい自分に近づける。

といいながらも、自分自身も置きにいってしまう弱い自分との戦いとの繰り返しです。仲間を見習って、自分も子どもたちのためにできる「行動の約束」を考えて実行しながら、成長していきたいと思います。

まずは、高校生から要望を受けて約束した「学部/学科紹介の実施」。みんなの予定を合わせて「来週の水曜日にやる」と約束し、さらに個別の依頼についても調べておくと約束したのでバッチリ仕上げて臨みます。